綱領

党の理念

  1. われわれの党は、日本国憲法の精神を堅持して、 平和で民主的な文化日本国の発展と真の地方自治の確立により、ゆたかな沖縄県建設を図ることを 信条とする。
  2. われわれの党は、自由と個人の尊厳を重んじ、住民大衆平等の福祉を図ることを政治理念として、 左右両極端から生ずる暴力主義、全体主義的政治を排除する。
  3. われわれの党は、政治の恩恵が全住民にひとしく行きわたるべきことを信条とし、自治権の拡大、 経済の健全なる発展を図り、すべての社会不安を除去することを政策の基本とする。

党の性格

  1. ヒューマニズムを基底として正義の実現を図る政党である。われわれの党は、ヒューマニズムの精神を基底として活動する。人道問題はあらゆる問題に優先すべきであって、住民が独占資本優先 の政策のために、あるいは外交上のかけひきのために、あるいは党利党略のために不当な犠性を強いられてはならない。政治目的が正しいと共にその手段も正しくあることが民主主義の精神であり われわれはこの信念のもとに正義の具現につとめるものである。
  2. 革新的政策の具現に努める責任政党である。27年の長期にわたって祖国から分離されていた不合理な姿からくる沖縄施政の実際面において基地依存による経済の不安定、福祉社会に必要な制度の不備、住民の負担過重と教育水準向上への溢路、基地の存在に伴う人権の侵害、並びに社会悪と道義の低下等多くの欠陥と不満がある。このような諸現象は徒らに権力をおそれ、あるいは権力に迎合的な現状保持を根底にもつ保守勢力によってはその是正は望めない。逆に現状の不満を徒らに反抗の具とし問題の解決を意図せず、却ってこれをせん動助長しもって闘争の手段となし、ひいては混乱を作意して革命主義的目的を達成せんとする勢力によっても期せられない。われわれの党は民主政治力漬任政治であるという理念に徹して抵抗のための抵抗にあらず常に建設的な革新的政策の具 現に努めるものである。
  3. 大衆の政治力を結集する国民政党である。階級政党でなければ革新政党ではないとする考え方は否定する。又徒らに反抗する者のみが革新的であるとすることは独善的かつ英雄主義に通ずるものであっても、住民の福祉向上を図るための真の民 主的革新政党とは言い難い。われわれは中央集権 的支配から地方自治と住民の福祉を守らなければ ならない。そのためには特殊な階層のみの利益を図ったり、あるいは対立感情によっていたづらに分裂を来すような事があってはならないと信ずる。勿論、民主的社会集団の中においては個々の利害の対立のあるのは認める。それと共に全体の利害の共通性がある。われわれの党はこの共通性に立って個々の利害に捉われず住民全体の調和と統合 を実現するための政治的結合体たる国民政党として存在するものである。然しながら、われわれの もつ革新的政策を具現するためには農民、漁民、中小商工業者や働く勤労大衆がその中核となり、その生活の中からにじみ出る共通の利害こそ政治 力の基本となって現われなければならないと信ずる。党はこれら勤労大衆を中核体として結集した政治力により革新の実をあげんとするものである。

結党宣言

  1. 今次群島知事並びに群島議員の公選は、琉球における自治への躍進を示すものとして、われら百万大衆は心からこれを祝福する。然しながらこの時に際し、われらは、政治が民衆のためのものであり、民衆のものであることの自覚 と責任とを一層強く認識し、更に民衆が直ちに政治 に参与し得る方途を講ずるのが、目前の急務である ことを知らねばならぬ。然るが故に、普く大衆の立 場から住民全体の世論を統合し、これを政治に反映せしめ、且つ、住民が生活権の確立を政治的に解決するための大衆政党の必要性を痛感する。それはヒューマニズムを基底とし個々の利害に捉われず、住民全体の調和と統合とを実現するための 国民的政党でなければならぬ。 更にまたそれは住民大衆の福祉を希望しつつ時代 の要請する革新的政策を具現する政党でなければならぬ。かような現実の要求に応じて、われらはここに「社会大衆党」を結成し広く全琉の同志に訴えて その参加を求め、大衆の力を結集し、新琉球建設の 方途を実現したいと念願するものである。
     われらは新琉球の建設が、ひとえに住民大衆の政 治意欲の発揚に伴う政治への大衆参加にまたねばならぬものであり、また琉球において、実施されるべき施策は、飽迄も住民大部分を占める農民、漁民、 中小商工業者その他一般勤労階級の要望に則して為さるべきであることを信ずる。われらはまた新琉球の建設は、全琉球的総合計画経済によるにあらずんば断じて行ない得ないことを確信する。自由経済の 好餌により、或は又支離滅裂なる一方的経済政策により、農民、漁民、中小商工業者並びに一般勤労層を悲境に陥し入れる如き政治は断乎これを排撃し、且つ、また復興事業への政治ボズ、官僚ボスの介入を全面的に拒否する。終戦5ケ年の日子を過したにも拘らず、琉球経済の復興が未だその緒に就かざる所以のものは政治力の貧困と、割拠主義の幣害並びに、利己心の発露によるものであると断言してはばからない。茲にわれらは、かかる時幣を一掃し農業、漁業、 商工業を打って一丸とした総合経済計画を速かに樹立し、公益事業の公営を図りも傾斜生産方式を採用し、もって琉球経済の復興を速かならしめんことを期する。 われらはまた新琉球の建設が、住民の生活権確立を前提としなければならぬことを確信する。思うに民衆生活の安定なくして、文化の向上、社会の発展は期し得ない。而して民生の安定は、一に恐怖と飢餓からの解放なくしては不可能である。そのためにわれわれは、真に人間らしき生活を営むに足る収入の保障、恒久的住宅の建設、社会保険制度の確立、厚生施設の整備を期する。われらは国民各自の才幹が自 由に均等な機会を以って発揮せられ才能と勤勉が正しく報いられる社会的生活の樹立を目標とする。これこそ民主主義の根底であり、稲々たる道徳的瀬廃を 克服する条件である。又これによって初めて産業と 行政能率が回復し、住民生活の向上と家庭生活のうるおいが可能となる。われらは、終戦後の琉球において、為すべかりし革新が未だ為されていないこと を痛感する。これは徒らに旧套を墨守する保守的人物によって政治が運営されてきたからである。 茲にわれらは、新琉球の要請する革新を断行し、 似非民主主義を排除し、真正民主主義への転換を図るために利益の追求を念頭に置かず、常に正義と 信念に基いて行動し得る若き世代の活動に期待する。 最後にわれわれは、我が党の方針は、凡て民主的党 運営によって結集される全党員の総意に基き決定せられ、且つ、党の人事もまた党組識において鍛練せられ、党活動の実践過程において、その才幹能力を発揮し得た者を以って充てられるものであることを ここに明らかにする。琉球は後ニ年を以って自立経済に入らねばならぬ。 
 今にして琉球経済の再編成を行なわないならば、 住民の生活は危殆に瀕するであろう。この現状をわれらは琉球経済の危機と呼ぶのである。今や徒らなる論議に耽り、他を誹請中傷することを以って能事おわりとすべき時ではない。この危機を脱するには、 琉球が現在かかる危機に置かれているとの明瞭な意識を持ち、琉球経済復興のために住民大衆の政治力 を結集し、断固たる決意と、たくましい実践力とを以って革新政策を具現し、住民生活の安定を期すべく努力しなければならない。われら結党の目的もまた茲に存する。われらは過去において十分に発揮し得なかった力をこの際ここに凝集して運動の中心力たらしめ、以って琉球経済の正しき発展を図り、民生の安定を期すべく誓うものである。
     右宣言する。
  • 1950年10月31日

沖縄社会大衆党