沖縄社会大衆党復帰50年宣言を発表
2022年5月15日
高良鉄美委員長、比嘉京子副委員長、当山勝利書記長で県庁記者クラブにて沖縄社会大衆党復帰50年宣言を発表しました。
全文
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今年は周知のとおり「復帰50年」の年である。それだけではなく、「屈辱の日」となったサンフランシスコ講和条約3条による「分離70年」でもあり、そして「平和憲法施行75年」を迎える年でもある。「復帰」を、分離された沖縄が元の日本に戻るという意味でとらえてしまうのでは何も見えてはこない。そこには沖縄の自主的な姿がほとんど映らず、日米交渉で領土であった沖縄を日本に復帰させたという観がある。一方、そこに「平和憲法」が入ると大きく中身が違ってくる。「平和憲法の下への復帰」という場合、沖縄が基本的人権の保障、恒久平和の追求、自治権の確立などを求めて復帰運動を展開し、復帰したという自発性が強く浮き出てくる。実際、「復帰」には沖縄県民の苦悩と努力の歴史が紡がれており、日米両政府は「寄り添う」という空虚な言葉等を羅列するのではなく、悲惨な沖縄戦を含む戦後史を俯瞰し、理解する基本姿勢を持つべきである。
沖縄社会大衆党は、平和憲法施行と沖縄分離のはざまにある、1950年に結党された。党の理念には、「日本国憲法の精神を堅持して、平和で民主的な文化日本国の発展と真の地方自治の確立により、ゆたかな沖縄県建設を図ることを信条とする」と明記されている。そして綱領には「自由と個人の尊厳を重んじ、住民大衆平等の福祉を図ること」を政治理念とすることが記されている。そこには「平和で民主的な日本国」を標榜し、「真の地方自治」の確立により、「豊かな沖縄県」建設を目標にしている姿が映っている。また、「自由と個人の尊厳と住民福祉」を掲げている。これらの言葉に表れているのは、その20数年後に作成され、日本政府に手交された「復帰措置に関する建議書」でいう「平和で豊かな誇りある沖縄」とほとんど同じ目標を見つめた強い願望であることに気付く。そして、復帰50年、この目標と未だにかけ離れた沖縄の現状を見るにつけ、我らはあらためて建議書が活きていることを確認するのである
1950年の結党宣言には「新琉球の建設」という語が散見される。沖縄戦の爪痕が強く残っている中、平和憲法の理念が実感として盛り込まれている。住民の生活権を第一に考え、民生の安定には「恐怖と飢餓からの解放」なくしては不可能であると断じている。憲法前文の「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」(平和的生存権)の追求は、復帰運動の実質的内容であった。沖縄戦で破滅的状況にあった「琉球経済の復興」を強く意識しながら、また沖縄分離をも睨みつつ「琉球はあと2年を以って自立経済に入らねばならぬ」との悲痛な覚悟を自らに課した。70年以上前の結党宣言の内容は、むしろアジアに向けた経済拠点の一つとして発展しようとしている現在の沖縄に当てはまるもので、復帰50年の覚悟として全県的に取り組む必要がある。
民主主義についても「似非(エセ)民主主義」を強く非難し、「真正民主主義」への転換を要求している。半世紀前の琉球政府が県民の願いを織り込んだ「復帰措置の建議書」に対してあからさまに無視した国会や日本政府の姿勢は似非民主主義であり、現在の国政の在り方や沖縄への対応も、およそ「真正民主主義」と呼べるものではない。駐留軍用地特措法改正強行採決やオスプレイ強行配備、辺野古埋立て工事強行然り、そして県民投票結果黙殺然りである。まさに「真の復帰」、復帰のあるべき姿が未来に向けて問われている。復帰前から問題となっていた、米軍基地に起因する事件・事故に苛まれていることはもちろん、米軍基地から新型コロナ感染が急拡大した時期もあった。世界中を揺るがしている新型コロナのパンデミックはいまだ終息しておらず、観光業を中心とした沖縄経済にも大きな影を落としている。新型コロナの感染問題は、地位協定によって検疫法、航空法、刑事訴訟法、民事訴訟法など約30の法律が適用除外や特別法という名前によって米軍に特権、免除を得る形で大きな弊害を生じさせた一例である。沖縄社会大衆党は沖縄住民にまで悪影響を与えている地位協定の抜本的な改定を強く求める。
復帰50年を迎えるにあたって、2月24日のロシアによるウクライナ侵略の問題は、憲法9条の重要な意義を改めて確認することになった。沖縄県民が今回のウクライナ侵略を見て自らを重ね合わせたのは、形は違えど、大国の独善的判断によって国益を守るため、無垢の住民のいる国(地域)を軍事侵略(攻撃)の的にされた歴史的経験があるからにほかない。今こそ、憲法に基づく政治(憲政)が求められているときである。平和外交の徹底は、ウクライナ問題だけでなく、台湾有事の問題においても重要である。しかしながら国政の場では、ウクライナ問題を口実に台湾有事を想定した南西諸島のミサイル基地化を進めながら、敵基地攻撃能力や核共有の議論が飛び交っている。このような平和憲法理念に反する改憲論議に断固として反対する。皮肉なことに敵基地攻撃能力の議論は、真っ先にその攻撃対象となる基地を建設していることを頭の中から消し去っている。沖縄戦の経験がない世代でも、一度攻撃を受ければ自分の生活がどう変わってしまうのか、ウクライナの戦況で想像に難くない。3年前の2月24日、新基地建設に対して、「県民投票」という形で反対の民意が明確に示された。辺野古埋立て強行に対し、ジュゴン、サンゴ、生物多様性、軟弱地盤、活断層、沖縄戦の遺骨混じりの土砂など、あらゆる沖縄の存在の総力で以って県民とともに闘っているのである。
最後に、復帰の50年を迎えるだけでなく、日中共同宣言による国交回復50年もまた今年である。「復帰政党」といわれる沖縄社会大衆党は、沖縄を取り巻くアジア諸国との「平和交流の万国津梁」の姿を見据え。沖縄戦後50年に平和を祈念して築かれた「平和の礎」の理念と同様、「平和憲法の下への」「真の復帰」を考え、「基地のない平和で豊かな沖縄」の実現を訴え続けることをこれからも信念とする。
2022年5月15日 沖縄社会大衆党委員長 高良鉄美